<三島風穴>埋め立て前に学術調査を 富士山周辺で最古級

かるの

2010年03月23日 08:17

 三島風穴と今回の埋め立ての範囲

 富士山の噴火でできた溶岩トンネルの中でも最古級で、静岡県三島市のJR三島駅北口の地下に広がる「三島風穴(ふうけつ)」が今月下旬にも埋めたてられる。工事を行う静岡県三島市によると、風穴の真上に市道を造るため、推定約3000平方メートルある空洞の半分をセメントなどで充てんし、地盤補強する。風穴に対する学術調査は実施されていないが、溶岩が生み出した貴重な鍾乳石などが残され、火山学の専門家から「工事前に学術調査すべきだ」との声が上がっている。

 三島風穴は、噴火で流れ出た「三島溶岩流」の最南端にあたり、富士山周辺で100以上確認されている風穴の一つ。1万数千年前にでき、総延長は分かっているだけで約300メートル。1953年に発見され、86年に日本火山洞窟(どうくつ)協会(現・富士火山洞窟学研究会)が実地調査した。長年かけて形成された「溶岩鍾乳石」などがそのまま保存され、市街地に残る洞窟としても全国的に希少という。

 かつては製薬会社の敷地内にあり、会社の移転に伴って05年、三島市函南町土地開発公社が公共用地として買収した。市によると、風穴の内部で崩落が確認されたため、道路工事に先立ち、今月内にもセメントと粘土質の資材で充てんする工事を始める。市建設部は「安全を期すのが第一の目的。手当てをしなければ風穴の真上にある既存の道路も崩落する恐れがある」と緊急性のある工事だと説明している。

 一方、今年2月に風穴を調べたNPO法人「火山洞窟学会」(事務局・東京都)の立原弘会長は
 「埋める前にきちんと全容を調べ、残すべきところは残してほしい。教育的な価値もある」
と指摘。山梨県環境科学研究所自然環境・富士山火山研究部の輿水達司部長も
 「山梨県側の富士山北麓(ろく)では三次元解析など最新の手法を使って風穴を調査している。調査前に埋めるとは信じられない」
と話している。【安味伸一】

[ 2010年3月15日 (毎日新聞)


 三島風穴を調査した火山洞窟学会による緊急報告はコチラ→http://vulcanocave.poc.jp/mishima20100206/
 
 「鍾乳洞は人の一生以上の長い時間をかけて作られるものだから大切に。」
というのは洞窟に入る際に注意される最も基本的な事だ。どうやらそれは場所によって都合が変わるようである。

 演劇で、山奥の村にある鍾乳洞のような穴に自殺に来た人と廃棄物処分場にする為に調査に来た役場の職員と未踏破の洞窟を一番に入りたいという探検家が鉢合わせして様々なドラマが展開される話があったが、なんとなくそれに近い話になって来た。

 貴重な文化財が民間の所有になると何をされるかわからない、と言われるが、今回の件は民間企業が保持していた所が公有地になって破壊されてしまう。

 「安全を期すため」
と言われると、「それじゃしょうがない」と思う人もいるかもしれないが、どこまで危険が迫っているのか、どう危険なのか、危険を回避するためにどんな手段が必要なのか、という事も全く提示されていない。  
 目の前で事故が起きて人の生命が危機に瀕しているという状況ではないだろう。他にどんな手段が取れるかという事を、考えた上で判断すべきだ。


 六本木ヒルズは計画から20年以上を経て完成したが、15年以上を住民への説明に費やしたといわれる。
 民間企業で出来るのに、更に負担が軽い自治体でなぜ長期的な視野が持てないのか。

 短絡的に行政の仕事を批判するのは好きではないが、やるかやらないかという選択肢が極端な例が多すぎる。当事者となった人にはもっと情報や提案が欲しいのに、賛成か反対という選択肢しか残されないからイザコザになる。
 行政としてはイザコザを避けたいがために計画通りに進めたいのだろうが、住民の意思を無視した計画の推進は結局、時間・資源・資金の無駄になるのではないか。

 今回の件は住民運動などはないが、この工事が行われたら復元する事は不可能になる。一万年以上も昔からあった景観を、数十メートルの道路を通すだけのために破壊するのか。工事するにしても、もっとやるべき事はあるのではないか。全国的に貴重な自然景観である事はもっと三島市の方は知っておいた方が良い。


 

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