西武閉店の現場を見に行く

かるの

2013年02月03日 08:03

 1月31日、西武百貨店沼津店が閉店した。
 各地の西武、特に沼津市より大きな街の西武が閉店しても、沼津店は存続していた。ある意味、近隣唯一の百貨店として商圏を掴んでいるからかと思っていたが、遂に閉店となった。

 正直な所、自分に西武での思い出は無い。子供の頃から郊外型生活者で、両親も特に西武で買い物をする、という事は無かった。
 成人してからも偏った趣味趣向からか、目当ての買い物は無かったのである。

 閉店前に見に行くことに。多くの人が最後の買い物と、歩き回っていた。



 これほどじっくり歩き回ったのは初めてだった。しかし思っていたより小さく、そして導線に不自然さを感じた。
 商品を購入するだけならネットでも買える時代だ。わざわざ足を運ぶ理由が無ければいけない。これでは今の顧客の要求には応えられないのかもしれない。

多くの人がメッセージを寄せていた。

これを見ると、沼津における消費文化に西武の果たした役割が見て取れる。

初めての洋食が西武のレストランだったこと。
人生の節目となった時の服を購入したこと。
沼津西高の生徒の就職先が西武であったこと。
初めて有名人を見たのが西武であったこと。
東京にしかない物が置いてあって感激したこと。

などなど、様々な思いが書き連ねられていた。

ただ、西武によって人知れず廃業を余儀なくされた商店も今までもあったのである。それが西武の順番になっただけなのかもしれない。

そして運命の時間である。沼津でこれだけの人が集まっている風景というのは初めて見る光景であった。



たまたま自分の前に居た女性二人は感極まったのか、店に向かって手を振りながら涙を流していた。

消費行動とは、単にモノとカネの動きかもしれない。しかし、そこに思いというものも介在している、という事を実感した時間であった。



 「不況だから仕方ないよね」という声があるが、そごう・西武グループ自体は黒字を確保している。この事は沼津という地に百貨店を置く魅力が無い、という事を端的に示しているのではないか。
 何より、閉店が発表されてから、取り立てて沼津市や商工会議所などの西武閉店後の事に関してを述べた具体的な意見が出された事が見受けられない。その無関心さに崩れ落ちてしまったのではなかろうか。
 来年夏をメドに西武の建物は解体される。更地にした後、これからの活用方針を検討するという。何が出来るにせよ、この地にどんな消費文化が生まれるのだろうか。
 
 新幹線駅が無かろうが、百貨店が無かろうか、人が集まる所は集まる。
 何があるから、何が必要だ、何が無いから、と要因を外に求めるのはもうやめよう。
 

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