カモメの詩が聞こえる街 増毛へ ③

かるの

2016年10月09日 09:06

先回の続き・・・


 増毛町は北海道の北西部にある人口五千人ほどの町。
 沿岸の新鮮な魚介に恵まれている所で、特にボタンエビの漁獲高は日本一。他にも甘エビ、ホタテ、蛸、イカ、ウニ、ヒラメ、鮭など種類が豊富な海の幸、イチゴ、さくらんぼ、ぶどう、プルーン、洋梨、りんごなど甘い果物。
 道北としては気温が高めという事で米作も盛んで品質、食味とも高評価で、日本最北の酒蔵もあるという山海の産物に恵まれた地です。私は全寮制の学校に通っていたのですが、同じ部屋に増毛出身者が居たというのも今回の旅の動機の一つ。

 増毛駅は今はひっそりとしているが、昭和30年頃までのニシンが獲れた時代には、駅員や係員、旅客も多く、それなりに賑わっていた駅だった。かつては貨物用の線路や転車台が敷設されていた広い構内も、今は広い空き地になっていて、多数の職員がいた駅も今は無人。ホームから駅舎へと歩く途中、車輪止めによって途切れた線路はここが本当の終着駅であることを実感する。

 増毛駅前に降り立って駅前すぐの所に、木造三階建ての威容を誇る建物があり目を奪われた。

 母屋の部分に「旅館富田屋」とある。昭和8年の建築ということだが、建物はしっかりしていて二階と三階には一面のガラス窓が迫力を見せる。玄関の破風、深緑の屋根など、外から見ても昔、ここが繁栄していた頃の名残が感じられる。残念ながら30年ほど前に廃業されてしまったため外から眺めるほかない。

 その隣には「風待食堂」と掲げられた観光案内所がある。
 増毛町は、留萌と共に古くから漁業で栄えた港町だけあって町中にも歴史ある重厚な建物がたくさん残っており、その情緒あふれる独特の雰囲気から数多くのドラマや映画のロケ地となっている。










 増毛駅を舞台としたもので特に有名なのが、高倉健さん主演の映画『駅 STATION』。健さんの扮する主人公・英次の故郷が増毛町の雄冬(おふゆ)地区という設定だったこともあり、増毛駅から連絡船に乗るシーンなど、増毛駅を中心としたこの一帯がたびたび登場する。
 この風待食堂は多田商店という店であったが、映画に使われたそのままの外観で、中に入るとロケ風景の写真が飾ってある。

パンジャンドラム?


日本最北の造り酒屋・国稀




 歩いていて色々と見所を感じるものの、途中にあった食品スーパーで色々と買い込み、もう既に夕方なのでキャンプ地へと急ぐ。
 増毛駅から歩いて20分ほど、暑寒海浜キャンプ場は申し込みの必要が無い自由なキャンプ場であるものの、水場とトイレがあり近くには温浴施設やコンビニもあるなど好条件なキャンプ場だ。
 来る途中の車窓にて、瀬越海水浴場のキャンプ場が隙間なく埋まっていたのを見て、何となく予想はしていたのですが、このキャンプ場も大賑わいで、条件が良い芝生の所は全て埋まっていたので、草がぼうぼうな所を何度か踏みしめて均してからテントを張る。





 荷を下ろしてテントを張ってようやく一息ついて、近くの温浴施設「オーベルジュましけ」へと入浴。
 この施設は増毛町出身の三國清三シェフ監修による「地産地消」をテーマに作られた宿泊施設を備えたレストランで、日帰り温泉も楽しめる。ただ、キャンプ場が込んでいたように、温泉も非常に込み入っていて、落ち着かなかったのと、湯温が高く露天風呂が無いので暑さに弱い私には殆ど入れず、一番長い時間浸かっていたのは水風呂でした。
 テントに戻り、その日の昼食が多かったからか腹が空いてないので、夕食を摂ろうという気持ちにならず、スーパーで買った地酒をチビチビ飲んでいたらそのまま寝落ちしてしまった。

続く…



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